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福祉介護サービス評価センター関連情報(福祉業界の「感情労働」を考える)

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福祉業界の「感情労働」を考える

〜関西大学・池内裕美教授からお話を伺いました

 

昨今、社会全体をとりまくサービス業で共通する特徴として、対人業務上、一定の感情表現(対応)を求められる仕事「感情労働」が注目されています。

福祉・医療分野においても例外ではなく、利用者・家族に「よい評価」を得るために相手の態度・心理状況にかかわらず、標準的な対応(親近感や明朗が求められることも)を保たなくてはいけない重圧もあります。

今回、消費者心理やハラスメント問題に詳しい関西大学・池内裕美教授にお聞きし、福祉サービス事業所に求められる姿勢を伺いました。

 

 

【池内裕美 教授 プロフィール】

兵庫県神戸市生まれ。大学院修了後、広告デザイン会社で市場調査や商品企画等の実務経験を経て現職。専門分野は、社会心理学・産業心理学(特に消費心理の領域)。現在の主な研究テーマは、買い物依存やモノの溜め込み、さらには苦情行動といった「逸脱的消費者行動に関する心理的メカニズムの解明」。特に苦情研究は社会的注目度も高く、メディアからコメントを求められることも多い。

 

■ 「感情労働」とは

顧客などの満足を得るために自身の感情をコントロールし、常に模範的で適切な言葉・表情・態度で応対することを求められる労働のこと。「肉体労働」「頭脳労働」に続く第3の労働形態として、米国の社会学者アーリー・ホックシールドが提唱した。具体的には、旅客機の客室乗務員をはじめとする接客業、営業職、医療職、介護職、カウンセラー、オペレーター、教職などが挙げられるが、近年はあらゆる職種で感情労働を強いられるケースが増加傾向にある。感情労働による疲労や心の傷は回復しにくく、メンタルヘルスの不調を引き起こすことも少なくないため、社会問題化している。

(インターネットサイト:コトバンクから引用:

https://kotobank.jp/word/%E6%84%9F%E6%83%85%E5%8A%B4%E5%83%8D-802230#E7.9F.A5.E6.81.B5.E8.94.B5mini )

 

1.昨今の感情労働問題について、なぜ今そのような問題が取り沙汰されるようになったのでしょうか?

感情労働が問題視される背景には、過剰サービスによる過剰期待があると思われます。日本のサービスは、「おもてなし」という言葉が象徴するように、世界でも最高水準です。これは素晴らしいことなのですが、その一方で消費者の“やってもらって当たり前”といった意識を高めているのも事実です。それゆえサービスに対する期待が高く、少しでも意にそぐわないとすぐに不満や苦情につながり、下手するとSNSで高速拡散されてしまう。提供者は、そうした事態を避けるために、さらにサービスの質を高め、その度に消費者の期待もどんどん高まっていく…。そういった悪循環が、提供者を苦しめ、その実態が明るみに出たことで、人々の注目が集まったと考えられます。

特に、福祉職員は「気配り」「やさしさ」「思いやり」を持つことが期待され、自分の感情を管理することが必要となります。利用者・家族の「よい評価」にこだわり「誠実義務」に徹することや、また、利用者の言動等に共感しすぎるゆえにストレスから感情疲労を起こすこともあります。その状態を放置していると、やがてバーンアウト(燃え尽き症候群)につながる危険性があります。

 

2.事業所の取組改善につながる苦情等は真摯に対応すべきですが、一方で、非常識なクレームを言われる方の特徴などはありますか?

 これまでの研究では、クレーマーには、高学歴・高所得で社会階層が高い人が多いこと、自尊感情が高く完全主義的な傾向が強いこと、社会的不満が高いことなどの特徴があるとされています。つまり、こうした特性を持つ利用者が、各自が受けているサービスに不満を持つと、「支援を受ける権利」を掲げて過度なクレームを訴えやすいといえます。特に、知識や地位のある人は筋道を立てて苦情を言ってくる場合も多く、特に「筋論クレーマー」と呼ばれることもあります。また、性格特性では「寛容性の低さ」との関連性も指摘されており、謝罪をしてもなかなか許してくれないので、クレームが長期化、悪質化する傾向にあります。

 

3.福祉サービス提供者において、利用者第一を掲げる事業所が多いと感じます。よい評価を得るために苦情対応は事業所の責務となっていますが、限度はありますか。

利用者や家族の信頼を得てサービス向上に努めることの一方で、相手が自身のこだわりに基づく要望や非常識な苦情を表出されるケースも散見されます。事業所としては「常識が違う」と一蹴せずに、利用者・家族が何を背景に要望を求めているのか傾聴し見極める必要はありますが、内容、感情表出の手法・程度、頻度などを考慮し限度を設けるべきです。

特定の要望、クレームが続くことで事業所の通常の取組が止まってしまう事態や、暴力・暴言に訴えられるようなケースである場合は、不当要求行為として毅然とした対応を取ることも必要です。きちんと職責を果たしているならば、過度なクレームに屈する必要はありませんし、ひとたび不当な要求に応じてしまった場合、それが事業所の新たな対応基準になると思った方がよいでしょう。提供者自身の首を絞めないためにも、どこかで対応の線引きは必要になるかといえます。

 

4.感情をすり減らすような利用者対応を想定し、事業所の体制整備を図ることはできるでしょうか?

事業所としては苦情の受付担当者が孤立しないように、組織全体で対応に取組む必要があるのではないでしょうか。また、苦情の公表を積極的に行い、事例を積みあげることで、要望に対する取組姿勢や、組織の対応方針を見えるようにし、対応できることとできないことのラインを明確にしていくことも、事業所としての日々の取組として必要なのではないでしょうか。

平成30年度、厚生労働省の実態調査から現場のハラスメント問題が浮き彫りになったことを受けて、利用者や家族からのハラスメントに対する「介護事業者向けの対策マニュアル」の検討が報道されています。利用者の権利擁護と併せて、従事職員の職場環境改善や人手不足の進行を食い止める狙いもあると思います。



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 TEL:073-435-5263
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 メール:washakyo@wakayamakenshakyo.or.jp
 ホームページ:https://wakayamakenshakyo.or.jp

このページの最終更新日: 2019年02月19日